時間はコマ送りなのか? プランク時間と「最小の一瞬」

動画を一時停止すると、動いていた世界が一枚の静止画になります。一コマずつ進めれば、動きは別々の絵の並びに見えます。時間そのものも、こんな仕組みなのでしょうか。

「最小の一瞬」の話でよく登場するのが、プランク時間です。物理学できちんと定義された尺度ですが、とても小さな時間の単位があることと、宇宙のフレームレートが確かめられたことは、別の話です。

カメラはコマで記録する。世界もそうなのか?

紙に滑らかな線を引いて、その途中の何か所かに印を付けたとします。印は離れていますが、間に引いた線はつながっています。いくつかの瞬間を抜き出す記録でも、同じ区別があります。記録の形だけでは、記録されたもの自体の形までは決まりません。

動画のコマとコマの間に隙間があることは、記録の仕組みについて教えてくれます。その間、何も起きなかったと確かめたことにはなりません。

滑らかな線の上の四つの点と、その下の四つのフィルムのコマ。離れたコマは抜き出した記録を表し、物理的な時間の隙間を示すものではない。
記録の仕組みを考えるためのたとえで、プランクスケールの構造図ではありません。滑らかな線と、抜き出したコマを区別しています。点やコマの間隔は説明上のもので、実際の時間の刻みを表しません。

三つの定数から作る時間の尺度

プランク時間は、光の速さ、重力定数、換算プランク定数を組み合わせて作ります。相対論、重力、量子の世界に関わる定数です。2022年のCODATA推奨値では、およそ5.39 × 10−44秒とされています。NISTの一覧で数値と定義を確認できます(英語PDF)。

光がプランク長の距離を進むのにかかる時間でもあります。日常の使いやすさから選んだ単位ではなく、物理定数から得られる自然な尺度です。UNSWの教材では、この尺度の作り方を説明しています(英語)。

ただし、時間の単位を持つ量を計算することと、「針がこの幅でしか進めない時計」を観測することは、同じ実験ではありません。

それでも、この尺度が大事な理由

この尺度では、量子の効果と一般相対論の効果を、どちらも考える必要があると期待されています。そのような条件を記述するために必要なのが、量子重力です。慣れ親しんだ説明が向き合うべき問題を指し示してはいても、その先の仕組みをすべて教えてくれるわけではありません。Einstein Onlineは、プランク時間のこの役割を解説しています(英語)。

宇宙でいちばん小さな時計の写真というより、自然についての説明を、もう一度調べ直すための入口と考えるとよさそうです。

「離散的」は、宇宙の映画と同じではない

離散的な要素から出発する研究もあります。たとえば因果集合の理論では、基本となるのは一つ一つの出来事と、その前後関係です。Rafael Sorkin自身の解説でも、量子重力に向けた仮説として紹介されています。Sorkinによる因果集合の入門はこちらです(英語)。

これは「宇宙中の物が、一斉に次のコマへ進む」と言うよりも、ずっと込み入った提案です。出来事同士がどう関係し、そこから見慣れた空間や時間がどう現れるのか、という規則も必要になります。

さらに、構造が離散的であることと、測定でどこまで細かく区別できるかという限界も、区別が必要です。Sabine Hossenfelderの最小長さに関するレビューでは、研究の立場によって、これらの問いに一律の答えが出るわけではないことを論じています。これは空間の分解能についての議論ですが、「最小の尺度」に関する話を、すべて同じ意味だと受け取らないための手がかりになります。レビューの3.7節を参照できます(英語PDF)。

つまり、プランク時間を計算しただけでは、時間がパラパラ漫画だと証明したことにはなりません。あるモデルに最小の時間間隔があるのか、あるとして何を意味するのかは、数値に名前を付けるだけでは答えられない問いです。

コマの間から始まる、SFの謎

ここからは、架空の物語です。街中の監視カメラで、同じ一コマが抜け落ちたとします。誰かが「時間そのものが飛んだ」と言い出します。

ところが探偵は、先に小さな問いを立てます。飛んだのは世界なのか。それともカメラが、同じ故障した時計を使っていたのか。二つの説明を見分けるには、何を観察すればよいのでしょう。

これは創作した謎で、プランク時間を撮影するカメラの設計案ではありません。「記録に隙間がある」から「現実に隙間がある」への飛躍。物語では、その飛躍を使うことも、疑う人物を登場させることもできます。

以前の時間の矢の記事では、時間の向きを考えました。今回は、時間に刻みがあるのかという問いです。同じ時間の話でも、片方が分かっただけで、もう片方の答えが出るわけではありません。

このテーマに興味のある方は、こちらの小説も読んでみてください。

ブログに戻る